「永遠のピアノ」 朱晓玫(シュ・シャオメイ) 著

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 新刊。本を読むまで彼女の事を知りませんでした。有名なピアニストなんですね。

 小さいころからピアノの才能があり、専門学校に入ったものの時期悪く文化大革命の波が押し寄せ。彼女くらいの歳では教育されてしまうのは簡単で、思い込みから尊敬する先生たちまで糾弾してしまう。
 自らも学校にはいられなくなり、貧しい地域の農村を手伝ったり収容所に入れさせられたり・・・で青春時代を完全に狂わされてしまった。しかしピアノへの情熱は消えず、なんとかして渡米、そののちパリへ。自らの努力でなんと40歳からピアニストへの道を歩む、自叙伝です。

 最近芸大の飛び級の記事を新聞で読んだけど、才能ある芸術家にとっての10代20代の大事なこと大事なこと・・・その時期に文革が当たってしまった彼女は本当にお気の毒としかいえません。
多くの才能ある演奏家が命を落としたり、絶望したりしたんですね。楽器をひく、というのは農民こそが一番偉いという世の中では「ブルジョア階級」以外の何物でもない。
 そして「下放」されたその生活たるや、悲惨きわまりなく、人間、こんな状況でも生きられるんだなぁと、いつも文革関係の小説を読むと思ってしまいます。
 今思えば数年間、だけれど、最中にいたらいつ終わるかもわからない絶望感のなかの青春時代。家族とも離れ、食べるものもなく、過酷な労働、そのうえ監視され、冒涜され、屈辱に耐える日々。
(私たち、今の時代に生きられて幸せですよ、ホント・・・。)

 中国のピアニストには中国派、ロシア派、が存在するというのが面白かった。そう。お隣はロシアですから!
彼女は中国派、ランランはロシア派かな・・・。
 文革後、小沢征爾のボストン交響楽団が中国公演できた、という話も面白く。中国ではあの小沢さんは満州生まれ、ということで「中国人」としてOKだったのだそうだ。すごい!

 作者はピアノが弾きたくても弾けない状況が長く続き、しかしピアノへの憧れも絶えることなく、その想いが今の演奏に色濃くでているようです。私にはよくわからないけれど、演奏聞くとわかる方はわかるのでしょう。
奥泉光さんの小説「シューマンの指」にも出てきた「ダヴィッド同盟舞曲集」。
またここでも出典。私はあまりこの曲聞いたことがなくて(>_<)でもこの本にはかなり詳しく曲について書かれているのでじっくり聞いてみたいです。


そして彼女といえばバッハ「ゴルトベルク変奏曲」。バッハの世界とと中国人の世界観は似ている、と作者は語ります。

 この本を読んだら「(音楽を)練習する時間がない~」とかぶつぶつ言えませんって!!家に楽器があり、3食食べられて落ち着く寝床がある。こんなに幸せなことが他にありますか?比較対象があまりに悲惨なんだけれど、素直にそう思います。
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by wenniao | 2015-06-16 22:54 | こんな本読んだ(Book) | Comments(0)
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