「ことり」 小川洋子 著小鳥好き、にはたまらない1冊。小鳥が嫌いな方でも是非読んでほしいです。 語り手、は一体誰なんだろう・・・ ことり好きな「小父さん」とそのお兄さんが静かに暮らしている。 お兄さんは自分独自の言語(ポーポー語、と名前をつける)しかしゃべらず、それを理解できるのは弟である小父さんのみ。兄はことりの言葉が理解できます。 世間からみたらいつまでも独身の兄弟がひっそりと仲良く暮らしているのは、少々不気味に見えたのかもしれないけど、二人はその「昨日と変わらない生活」を続けていくことがとても大事に思えていた。 その兄が突然逝ってしまい、小父さんは一人で暮らすことになる。仕事は会社の寮の管理人。無償で近くの幼稚園の鳥小屋を掃除する。兄も好きだった小鳥を愛し、人に迷惑もかけずにひっそりと暮らしている小父さんに、世間の風は容赦なくあたる。 そこに翼に傷を負ったほんとうに小さなメジロの子供が。 あまり詳しくは書けませんが、この兄弟の小鳥に向ける視線が、ものすご~く、共感できます。 小鳥って、あんな小さくて可憐な生き物ですが、頭がよく、時に生命力にあふれ、人に寄り添うときがある。そして野鳥はあんなに自由です。 目が顔の両脇にあるので、「コレは何だ?しっかりみるぞ」というときは、実に思慮深く片目づつ確認するしぐさ、私もすごく好きです。 文鳥の目の赤いリング・・・そっとはがして小さな女の子の耳たぶにつけたら。なんて、いままで思ったことなかったなぁ・・・さすが作家さんの目線は違う。 毎日メジロの鳴き声を聞いているけど、「透かしレースのような」と書かれると、ほんとその通りなイメージで。ああ、もうきりがありませんって。 小川洋子さん、執筆にあったり文鳥を飼い始めたそうです(^_^) どうしても人間ひとりでは生きてゆけず、時には誰かを心のよりどころにしたり、社会と接点を持つ場面があらわれます。相手はいろいろであって、自分に非はなくても、受け取られ方が違う事もある。それでも人は摩擦を最小限にしつつも、生きていかなくてはなりませんね、死ぬまで。 日本のどこかのお話なのだけど、童話を読んでいるような気にもなります。 暖かくて、透明で、穏やかで、でも時に胸が痛むような。セピアカラーかと思えば、時には鮮やかに色がつく。全編をいろんな「ことり」が紡いでいるような独特の世界観です。 何年かしたらまた読み返してみたい一冊。
by wenniao
| 2013-02-11 11:42
| こんな本読んだ(Book)
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